八月、けたたましく鳴く蝉の声、かつての戦争の終わった月。
私の地元にも空襲がありました。
市街地に住む母は、焼夷弾が目の前に落ちる中必死に逃げ回ったそうです。
父の住んでいた山奥の農村からも遠く燃え盛る炎が見えていたそうです。
母が亡くなったのはもう随分前の事、
それから一人暮らしをしていた父が今月亡くなりました。
昨年冬には兄を失っています。
小さなウサギ小屋のような平屋に住んでいた五人家族も、
二人になってしまいました。
葬儀で何十年ぶりにあった親戚から聞いた話では、
私の写真が掲載された雑誌を父は嬉しそうに見せていたそうです。
恐らくその写真は冒頭の写真、私が写真を始めるきっかけになった作品です
この写真の桜の木ももうありません。
白い息を耐え、桜が散り、そしてけたたましく蝉が鳴く、
同じことを繰り返しながら、違う時代が過ぎていきます。